大阪地方裁判所 昭和58年(ワ)798号 判決
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【判旨】
一請求原因1(一)及び(二)の事実並びに同1(三)の事実のうち、原告が、鎖でけい留されていた本件犬に近寄り、咬傷を受けたこと及び現在も右受傷による瘢痕を残していることについては当事者間に争いがない。
また、<証拠>を総合すると原告は、本件事故により、右上腕に咬傷を、両顔面、両上肢に擦過傷、咬傷を負つたこと、本件事故の翌日である昭和五七年八月二〇日、訴外野中莞一医師の診察を受け、約一〇日間の加療を要するとの診断を受けたこと、昭和五七年末頃、訴外月江富男医師の診察を受けたが、この際にも右顔面に五か所、右上腕部に一か所、左上腕部に二か所、それぞれ赤味を帯びた色調の瘢痕が残存していたことが認められ<る。>
二そこで次に、本件事故発生についての被告の責任の有無について検討するところ、被告は、本件犬の保管につき相当の注意を尽したことについての具体的な主張をしないのみならず、<証拠>を総合すると、本件事故発生場所は、被告方居宅と公道との間にある道路予定地(市有地)であり、現在空地となつているが誰でも自由に立入通行が可能であり、現に乗用車等の駐車場として利用されたり、近隣居住者が通行するほか、子供達の遊び場ともなつていたこと、本件犬は、昭和五六年一一月二三日生れで、本件事故当時体長約五〇センチメートルであつたこと、被告は、被告方居宅に接した右空地部分に犬小屋及び犬をけい留するための支柱を設置し、右支柱に、約1.2メートルの鎖で本件犬をけい留していたこと、原告を含む付近に居住する子供達は、しばしば、本件犬や一緒にけい留されている本件犬の母犬に近付き、これに触わつたりしており、被告もこれをかねてから見知つており、子供達にいたずらをしないよう注意することもあつたことが認められ(なお、被告本人の供述中右認定に反する部分は容易に措信できない。)、右認定の事実によれば、被告は、本件犬を鎖でけい留していたとはいえ、誰もが容易に近付きうる場所にこれを放置していたのであるから、被告が本件犬の保管につき相当な注意を尽したものとは到底認めることができないものといわざるをえないから、被告は、前記受傷の結果原告が被つた損害について、これを賠償すべき責任がある。
なお、被告は、本件事故が原告の本件犬に対するいたずらに起因するものである旨主張するのであるが、<証拠>により認められる原告がこれまでに本件犬にいたずらをしたことがあつたこと及び本件犬がこれまで咬傷事故を起したことがなかつたことの事実を勘案しても、なお被告の右主張事実を認めるに足るものとはいえず、他に被告の右主張を認めるに足る証拠はない。 (奥田隆文)